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イノシシの止め刺しに使用している銃弾について

2021.10.13

コラム

嵇です。

前環境大臣の小泉進次郎氏が鉛製銃弾を規制する目標を発表したことが、話題になりました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4c8d5ea7869884ad2266cb7baedc6f7533e8cfc4

おおち山くじらでは、5年前からイノシシの止め刺しに使用する銃弾は鉛製から軟鉄製に変更しています。鉛製銃弾が世間の話題になりましたので、おおち山くじらがなぜ軟鉄製の銃弾に変更したのかについて説明したいと思います。

 

現在、使用している銃弾はダイセルパイロテクニクス株式会社「ジャガー」という商品名の軟鉄製スラッグ弾です。同等の鉛製スラッグ弾と比べて価格は2倍以上と高価な銃弾ですが、イノシシの食肉利用を推進する上で、非鉛製の銃弾は「明確なメリット」があると考えています。

 

鉛製銃弾の場合、鉛が柔らかいために獲物に当たった衝撃で1発の弾が変形して、バラバラの鉛の破片に分かれて、獲物の体内に入り込みます。頭部のみに銃弾が入れば問題ないのですが、狙いを外して銃弾が食用部位に入ると、散らばった鉛の破片がお肉を傷つけてしまい、その部分の肉は廃棄せざるを得なくなります。また、細かくなり、肉の奥に入り込んだ小さな鉛の破片を全て除去するのは大変困難です。

 

一方、軟鉄製銃弾の場合、敢えて銃弾が着弾後に7つの破片に分かれるよう設計されていますが、それ以上にバラバラになることがありません。破片一つ一つは形が一定で大きいので発見が容易です。総じて食用部位に入った銃弾の除去が鉛製に比べて簡単で、廃棄となる部位も少なくできます。

 

鉄砲での止め刺しは、罠に捕まって暴れまわっているイノシシに対して行うので、正確に頭部のみを撃ち抜くのは大変難しいです。ですので、一定の割合で銃弾が食用部位に入ってしまうことをみこして、銃弾の除去が容易で、食肉への影響が比較的少ない軟鉄製の銃弾を使用しています。

ただ、狩猟者自身が鉄砲で止め刺ししておおち山くじらに持ち込む場合、鉛製銃弾であることがほとんどですし、軟鉄製銃弾でも残留を見逃す可能性はありますので、食肉製品は全て専用の金属探知機に通すことで金属の混入を排除しています。(協力していただいている狩猟者さんに高くて流通量の少ない軟鉄製銃弾が使ってもらうことは難しいのが現状です)

 

小泉氏の発言は少し突飛なような気がしますが、今後この流れで軟鉄製や銅製のような非鉛製銃弾が広く流通して(ついでにちょっとでも安くなって)、本州の駆除捕獲や狩猟でも使用されることを期待しています。

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