猪に向き合う町

猪に向き合う町 – 美郷町 –

① 美郷町はこんなところ

自然

島根県邑智郡美郷町は、人口が4,000人強の山あいの町。県内でも人口密度が最も低い地域で高齢化率も45%以上。全国の中山間地域と同様、過疎化と高齢化が深刻な町のひとつです。しかし、鳥獣被害対策については全国でも先駆けて「地域住民が一丸となって取り組んできた町」です。秘密は、猪を地域の資源にしたい!という住民の意識の高さと、パワフルな婦人会。役場、鳥獣害の専門家、そして地域に住む住民が緊密に連携して、町ぐるみで猪に向き合っています。

 

 

② 自然環境

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島根県のほぼ中央に位置する美郷町は、中国地方で最も雄大な河川「江の川(ごうのかわ)」が町を貫流し、江の川の沿岸部は浸食によって形成された起伏に富んだ地形となっています。 また、北西部には標高300m前後の丘陵地帯が、東部には標高400〜700mの山々が連なり、町面積の89%を森林が占める、緑と水の豊かな地域です。 温暖で湿度も高いことから、堅果(ドングリ)類、植物の地下茎、果実、タケノコなど、猪が好む植物が多く、季節に関わらず、雑味の少ない良質な肉質の猪が育ちます。

 

 

③ おおち山くじらのイノシシ肉

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水と森林資源が豊富な中で育った野生の猪を、地域住民が研究を重ねて作り上げてきた独自の仕組みで捕獲し、衛生的で適切な処理によって「イノシシ肉」に加工する。 おおち山くじらのイノシシ肉は、自然と人が共存・共生を目指す中で作り上げられてきた「食材」です。

 

協力団体

美郷町では、「おおち山くじら」をキーワードとして様々な団体が役割を分担して活動しています。
有害鳥獣駆除班が捕獲する猪を株式会社おおち山くじらが食肉処理。精肉の一部を利用して株式会社クイージがイノシシの缶詰製造を行い、青空クラフトがイノシシ革のレザー商品づくりを行っています。
連携して活動する団体の皆さんから、一言コメントをいただきました。

 

美郷町有害鳥獣駆除班

美郷町 有害鳥獣駆除班

2004年のおおち山くじら生産者組合設立に先立ち、2000年に美郷町(旧邑智町)で有害鳥獣の駆除登録をしている狩猟者によって結成されました。
美郷町では、駆除活動を猟友会に一任せず、農家自ら狩猟者となることで、毎年一定数の猪を駆除することに成功しています。また、駆除捕獲した猪は、株式会社おおち山くじらが回収しにきてくれますので、捕獲する側も、処分の負担が少なく済みます。そのことが、高齢者や女性、会社員などでも駆除活動に参加しやすい最大の理由だと思います。
人口4000人の町に、私たち駆除班員が約100人…心強いですよ。

 


 

青空サロン

青空サロン畑 / 青空サロン市場

元・近畿中国四国農業研究センターの先生のご指導のもと、農作物の栽培方法や、獣害に強い畑づくりを学び、実践しています。青空サロン畑は、そのモデル畑として、毎年多くの視察者や専門家が集う「学びの場」となっています。
青空サロン市場では、各農家が農作物を持ち寄って、農作物を野生動物から守り抜いた喜びを分かち合っています。いつの日か、お茶やお菓子を囲む「集いの場」となり、情報交換にも役立っています。

 


 

青空クラフト

青空クラフト

イノシシ肉だけでなく、イノシシ皮も地域で活用したいという想いから、2012年に有志を募って設立しました。
地域で捕獲されたイノシシの毛皮を鞣した革を仕入れ、デザイン・裁断・縫製まで、すべてメンバーの手作業で製造しています。商品は主に、美郷町に訪れる方々に販売していますが、全国にリピーターやファンも抱え、注文に追われる日々です。

 


 

株式会社クイージ

株式会社クイージ 美郷支店

東京に本社を持つ獣肉卸業者です。2010年ごろからおおち山くじら生産者組合のイノシシ肉を仕入れていましたが、2014年に業務提携を結んだことをきっかけに、販路拡大と商品開発に力を入れてきました。
2015年には、美郷町内に支店を置き、廃園になっていた保育所をリノベーションして、イノシシ肉の缶詰製造にチャレンジしています。高い付加価値をつけたイノシシ肉を、都市部にも販売することで、地域に雇用や収入を生み出せると考えています。

 


 

伝統肉協会

特定非営利活動法人 伝統肉協会

野生動物肉食の普及活動を行っているNPO法人です。日本人が古来より食してきたシカやイノシシなど狩猟によって得られる野生動物の肉を伝統肉と定義しています。伝統肉を豊かな自然から得られる貴重で持続可能な資源と考え、この資源の継続的な利用により、現在起こっている野生動物と人間社会の軋轢に起因する課題の解決につなげていきたいと考えています。

 


 

美郷町役場

美郷町役場 美郷バレー課

「おおち山くじら」をキーワードとして町民の活躍の場づくりができればと考えています。また、「おおち山くじら」の肉が町の特産品として全国に展開するようサポートして参ります。

 


 

おおち山くじら生産者組合

近畿中国四国農業研究センターや美郷町役場産業振興課の協力があり、2004年に美郷町有志の出資により設立しました。
2017年に株式会社おおち山くじらに事業譲渡するまで、美郷町や近隣市町村で捕獲されたイノシシを搬入、処理し食肉として販売をしてきました。生産者組合は事業譲渡の後に解散することとなりますが、私たちの活動が事業として成立し、継続していくことはとてもうれしいことです。引き続き、『おおち山くじら』をよろしくお願いいたします。